腹腔鏡手術について
内視鏡手術について
腹腔鏡手術とは
お腹に小さな穴をあけて、腹腔鏡という内視鏡でお腹の中をのぞきながら、特殊な細長い器具を使用して手術する方法です。開腹手術に比べて傷が小さく入院日数も短くなり、多くの患者にとって体の負担が少ない非常に良い手術方法であるといえます。しかし、その視覚の限界や操作の困難さのため高度な技術が必要であり、重症合併症についてはむしろ従来の開腹手術よりも頻度が高くなることがあります。当院の腹腔鏡手術には必ず日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医が立ち会います。
当院における腹腔鏡手術の適応
不妊症、良性卵巣嚢腫、子宮内膜症・卵巣チョコレート嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群など(近年、ほとんどの婦人科腫瘍が腹腔鏡手術の適応となってきておりますが、現在当院では子宮筋腫、子宮外妊娠などに対する腹腔鏡手術は施行しておりません)。
腹腔鏡手術で予想される合併症や偶発症と危険性
- 1.大量出血、ショック
- 子宮内膜症は手術前に癒着を確実に診断することが困難で、予想以上に癒着が強い場合があります。癒着剥離すると大量出血をすることがあり、また止血しにくいことがあります。出血が大量になると体中の血液が少なくなりショック状態となります。場合によっては輸血となる可能性や、止血のため開腹手術となる可能性があります。
- 2.他臓器損傷
- 子宮卵管はもちろん、腸や膀胱・尿管などが強く癒着している場合、剥離時に損傷することがあります。損傷した場合修復することになりますが、その場合開腹手術となる可能性があります。
- 3.術後出血
- 確実に止血を確認してから手術を終了しますが、それでも手術後に再出血を起こすことがあります。場合により、再手術(開腹手術)が必要になることがあります。
- 4.感染症
- 通常、腹腔内は外界との交通がなく無菌状態となっていますが、手術することにより外界と交通するため、ばい菌などが少し入ることになります。ほとんどの場合、抗生剤投与により予防できますが、それでも重症感染症を起こすことがあります。
- 5.創部離開
- 腹腔鏡手術の場合、傷はかなり小さいですが、それでも感染などが起こった場合などは傷が開いてしまうことがあります。
- 6.血栓症
- 手術後しばらくは体の防御反応で血が固まりやすい状態となります。また手術当日は安静状態になるので、体中の血管に血の固まりができやすくなります。肺の血管や下肢の血管に特にできやすく注意が必要です。手術中から足をマッサージする機械を使ったり、術後早期に動いてもらうことで万全の態勢で予防していきます。
- 7.腸閉塞
- 手術後は腸が癒着を起こしたり、腸の動きが一時的に悪くなるため腸閉塞が起こることがあります。その場合食事の開始が遅れ入院期間も延長となることがあります。術後、早期に動いてもらうことで予防していきます。
- 8.皮下気腫
- 気腹法の場合、炭酸ガスをお腹の中にいれて膨らませて手術をします。その炭酸ガスが皮膚の下に入ってしまう場合があり皮下気腫を起こす場合があります。通常自然に吸収され数日でなくなります。
- 9.腹壁瘢痕ヘルニア(脱腸)
- 臍や下腹部の傷がもろくなって、腸などのお腹の内容物が袋状になって外に出てしまうことがあります。腹腔鏡手術の場合傷が小さいので、開腹手術に比べて頻度は低いですが稀に起こることもあり、その場合はヘルニア修復手術が必要となります。
上記の合併症は稀なものですが、確率をゼロにすることはできません。もし、これらのことが起こった場合、迅速かつ適切な対応をいたします。重症の場合は、高次医療機関に転院となることがあります。また、入院期間が予定より延びることがあります。
腹腔鏡手術術後の注意点
手術の結果によっては術後出血や感染が起こりやすいと予想されることがあります。その場合お腹の中の状態を手術後に観察する目的で、傷の一つに管(ドレーン)を立てたまま手術を終了することがあります。このような場合でも通常1〜2日後にはドレーンを抜いて、予定通り退院することができます。おへその傷はつきにくいため、しばらく浸出液が出ることがあります。また、おへその形が多少変わることがあります。術前に悪性かどうかの確実な診断は困難です。摘出した腫瘍は、顕微鏡にて詳しく調べ、この病理検査で悪性かどうかの最終的な診断となります。
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