一般不妊治療について
一般不妊治療について
不妊症とは
正常な夫婦生活を送っているにもかかわらず2年以上妊娠できないカップルのことを不妊症といいます。赤ちゃんをつくり始めてから1年で約80%のカップルに妊娠が成立し、2年で約90%が妊娠できるとされています。よって約10%のカップルが不妊症となるため、決して珍しい病気ではありません。
また、妊娠のしやすさに、最も影響を与えるのは女性側の年齢です(男性の場合は年齢の影響は女性ほど大きくはありません)。女性の場合、妊娠が最もしやすい時期は10代後半から20代後半といわれています。30歳をピークに少しずつ妊娠しづらくなってきます。30代後半を過ぎると加速度的に不妊症が増えていき、日本における体外受精の成績からみると44歳以上で生産率(一回の治療あたり出産できる確率)は実に1%以下となってしまいます。
近年、日本では晩婚化が進んでおり実際にはかなりの数のカップルが不妊症に悩まされていると推測されます。諸外国では1年以上妊娠しないカップルを不妊症と定義している国もあり、奥様の年齢が高く、また1年以上妊娠できないカップルは、早めに検査や治療を受けたほうがよいでしょう。
以下に日本における体外受精年齢別成績を示します。
年齢とともに妊娠率(赤い線)が下がり、一方で流産率(紫の線)が急激に上昇してくるのがわかります。
自然妊娠の成立過程
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まず脳の中心にある視床下部・下垂体という臓器からホルモンが産生され、卵巣を刺激し、卵子が入った卵胞を育てます。
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卵胞が2cmくらいになると下垂体からさらに多くのホルモンが出て(LHサージ)卵子が飛び出てきます。これが排卵です。
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飛び出た卵子は、すぐに卵管采という手のような部分に捕まって、卵管に取り込まれます。タイミングがあっていれば、精子はすでに膣のほうから上ってきて卵管膨大部という卵管の一番太いところで待ち構えています。
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卵子が入ってくると、精子が卵子めがけて一斉に突入し、たった一匹の精子だけが卵子に入ることができます。これが受精です。受精して、はじめてひとつの生命になるといえるでしょう。
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受精した卵は胚ともいいますが、ここから約1週間かけて卵管のなかをころころと転がりながら成長を続け、子宮に戻り、胚盤胞という状態になります。この形まで成長して初めて子宮の壁(内膜)にくっつくことができるのです。これを着床といいます。
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着床後の過ごし方については、医師と話し合いながら決めていくようにしてください。
ヒトの妊娠の成立はこのようにかなり複雑です。このうちの一つでもうまくいかなくなると不妊症となってしまうのです。
不妊症の治療
不妊症の原因が分かればそれに対する治療を行います。原因不明不妊症に対する標準的治療としては、まずタイミング療法を5-6回行います。残念ながら妊娠しない場合には人工授精となります。人工授精で妊娠できる方は5-6回までにほとんどが妊娠できるので、妊娠しない場合にはそれ以上やってもかなり困難であることがわかっており、体外受精をおすすめすることになります。
前述の通り、妊娠のしやすさは年齢に大きく左右されますので、年齢の高い方は早めのステップアップをお勧めすることがあります。不妊治療は健康保険の適応と先進医療と自費診療がありますので、「費用について」のページをご確認ください。
- 1.タイミング療法
- 超音波やホルモン検査などで排卵日を推定し、性交日を指導する治療法です。特に排卵障害や排卵日が不安定な方に効果があります。排卵がうまくできない人には排卵誘発剤を使用することがあります。
- 2.排卵誘発
- 排卵障害のある方には、排卵誘発剤を使用します。まずは弱い飲み薬(クロミフェン)を使用しますが、無効の場合はゴナドトロピン注射を行います。卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠には十分に注意して使用します。通常はタイミング療法や人工授精を併用します。詳細は「排卵誘発について」のページをご参照ください。
- 3.人工授精(AIH)
- 子宮内に調整した精子を直接注入する方法です。“人工”とついていますが、精子が子宮頚管部を近道できる以外はほとんど自然妊娠と変わりありません。詳細は「人工授精(AIH)について」のページをご参照ください。
- 4. 体外受精胚移植法(IVF-ET・ART)
- 人工授精を5-6回やって妊娠できなかった方は、残念ながら人工授精で妊娠できる可能性はかなり低くなります。その場合は体外受精胚移植法の適応となります。詳細は「体外受精治療について」のページをご参照ください。
- 5.手術療法
- 不妊症に対する代表的な手術療法に、子宮内膜症に対する腹腔鏡手術があります。腹腔鏡では原因検査のための診断的腹腔鏡や多嚢胞性卵巣症候群に対する卵巣多孔術もあります。また子宮鏡による子宮筋腫摘出術などがあります。詳しくは担当医にご相談ください。
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