不育治療について

不育症とは

日本産科婦人科学会用語委員会の定義では、妊娠22週未満の妊娠中絶(分娩)を流産とし、その自然流産を連続して3回以上繰り返す状態を習慣流産と呼んでいます。 また連続2回の自然流産を繰り返した患者様を反復流産と呼ぶこともあります。さらにこれらの流産に加え、早産や死産などにより生児が得られない患者様を総括して不育症とよんでいます。不妊症となるカップルは約10%ですが、不育症の頻度は大分低く、約1-2%とされています 。

不育症でない方でも1回の妊娠あたりに流産となる確率は15-20%もあり、流産とは決してめずらしいわけではありません。そして初期流産のほとんどは、赤ちゃん側の染色体異常などの大きな病気が原因のため治療法はありません。そのため流産が全く起きないと仮定すると病気の赤ちゃんが多く生まれてしまうことになります。流産とは悲しいものですが、元気な赤ちゃんを産むためには必要なことでもあるのです。
しかし、2回連続して流産するということは20-30人にひとりであり、3回連続して流産することは確率的にはかなり低くなります。そのため3回以上流産を繰り返した場合、不育症である可能性がかなり高くなります。

また、女性側の年齢も流産のしやすさに影響を与えます。たとえば44歳以上になると妊娠1回あたりの流産率は50%以上にもなります。これは卵巣機能が衰えてくるため卵子の染色体異常の確率が高くなるからです。高齢になると不妊症となってしまうのも、同様の理由です。

以下に日本における体外受精年齢別成績を示します。
年齢とともに妊娠率(赤い線)が下がり、流産率(紫の線)が急激に上昇してくるのがわかります。

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※日本における体外受精年齢別治療成績(2012年)

以前は不治の病とされた時代もありましたが、少しずつ原因も解明され治療法も確立されてきました。不妊症と並び、近年で最も検査方法や治療方法が進んできている分野の一つです。

不育症の原因

以下のようなことが原因とされています。原因と思われる異常が複数見つかることや、逆に原因を特定できない場合もあります。

1. 子宮や膣の奇形、子宮筋腫などの形態の異常

不育症患者での子宮奇形の頻度は12.6%と一般女性の約3倍とされています。原因の一つとは考えられますが、子宮奇形があっても不育症とならない方もいます。手術療法が明らかに有効であるという報告も少なく、治療するかどうかは慎重に判断しなければなりません。


2. 各種ホルモンの異常(黄体機能不全・高プロラクチン血症など)

黄体機能不全や高プロラクチン血症、一部の多嚢胞性卵巣症候群などは流産の原因とされており、異常があればそれに対する治療を行っていきます。


3. 内科的異常(甲状腺機能異常・糖尿病など)

甲状腺機能は亢進症・低下症ともに流産の原因となりえるため、甲状腺ホルモンを正常化していきます。また糖尿病の患者様で血糖値の管理が悪いと流産や赤ちゃんの先天奇形の原因となります。場合によっては専門の内科の先生と協力してみていくこともあります。


4. 感染症(ウィルス、細菌など)

クラミジアや梅毒感染は流産の原因となります。抗生剤により治療していきます。


5. カップルの染色体異常

不育症のなかでも約5%のカップルにおいて均衡型転座という染色体のかたちの異常が認められます。2回以上の流産の後に均衡型転座保因者と診断されたカップルの流産率は約70%にもなるとされています。治療法はありませんが、不育症の染色体転座保因者における自然妊娠での累積生児獲得率は約70%とかなり高いこともわかっています。


6. 凝固機能異常(血栓ができることが流産の原因になるといわれている)

もともと凝固異常(血液が固まりやすい)の方では、妊娠すると血栓を作りやすくなります。血栓の存在により母体-胎児間の血流が悪化し流産、・死産を来すと考えられています。


7. 免疫系の異常(自己免疫異常・同種免疫異常)

自己免疫疾患の一つである抗リン脂質抗体症候群では、抗リン脂質抗体により血栓を形成し、上記と同様の理由で流産・死産を来すと考えられています。また自己抗体である抗リン脂質抗体が直接赤ちゃんを攻撃してしまう場合もあります。